■ 「ナカナオリ」/笹野みちる セルフ・ライナーノーツ ■

中川五郎さんに素敵なライナーノーツを書いていただいておりますが、
ここでは笹野自身が1曲ずつ徒然なる思いを語ってみます。
曲のイメージをぶちこわさないよう気をつけつつ…。

 

1.ミズヲヤレ (作詞作曲:笹野みちる)

 2003年みちる庵シリーズ全6回が終了してから出来た、アルバム内で一番新しい曲です。もう1曲、POPで単純な曲を書きたい…と思っていて、京都から東京への新幹線の中でメロディーを何回も頭でリプレイして修正し、書き上げました。実は1番の歌詞は、5年程前すごく鬱だったとき日記に書き殴っていたものです。タイトルも「虚弱な才能」でした(笑)。どん底にダメなときには出来上がらず、ようやく立ち上がれるようになった今になって完成しました。今のほうがどん底のときよりもずっと、「あー、自分って、ホントーにダメなやつだわ」と、清々しく思えているような気がします。Whachoさんの無防備な大太鼓が大好きで、「意気揚々とドンドコ大股で歩いてっちゃう後ろ姿」を彷彿とさせるエンディングも大好きです。


2.ネコパンチ (作詞:笹野みちる 作曲:柳原陽一郎)

 2003年6月、みちる庵最終回の新曲として、その月のゲストであった柳原陽一郎さんに歌詞をお渡しして曲をつけてもらいました。実は収録されてるこのテイク、歌いながら最後のサビで少し泣きそうになってるのです。しかも、ミックスダウンが終わり、山口州治さんの素晴らしいミックスを大音量で聞いた時、またしても同じ箇所で涙が出てきて、みんなの前で泣いてしまいました。「しょうがないな、オバカさん…」と、自分に優しく諭されて、自分でツボにはまって泣けてしまうのです。おめでたいですね。みんなにも、「自分の曲で泣けるなんてなによりだね、幸せだね」、と言われました....(笑)


3.七色タコの子 (作詞:笹野みちる 作曲:ホッピー神山)

 アルバム作りを決めたときから、ホッピーさんに「1曲ぐらい、ピアノと歌だけっていうすごくアコースティックで美しい曲をアルバムに入れたいね」と言われていて、よ〜し!それ用の美しい歌詞を書いて、ホッピーさんに曲をつけてもらおう、と意気込んでいたのでした....にも関わらず、なぜかこんな歌詞に、どうしてもなってしまったのです。こんな滅茶苦茶な(でも感動的な!)歌詞をここまでPOPで壮大な物語に仕上げてくれるホッピーさんは本当に天才だと思いました。しかも、岡井大二さんのドラミングの妙味もさすがです。その後、ミックス時にホッピーさんから「四人囃子」のレクチャーをたっぷり受けました(笑)。有田のフレットレスベースが、うごめく大ダコさながらの見事さで、曲の臨場感がいや増します。


4.ケヤキ (作詞作曲:笹野みちる)

 みちる庵3月の新曲です。この頃、毎日作詞に燃えていて、出来ても出来なくても、ヒマさえあればメモとボールペンを持っては公園に出かけていました。東京ではもっぱら井の頭公園です。このときも1時間ぐらいベンチで座ってボーっとしたり、うろうろしたりしながら「あー、今日は無理...」と諦め、立ち去ろうとして歩き始めた瞬間から、突如、次々と色々な光景に出くわしたのです。公園の出口で一挙にそれらをまとめて、立ち尽くしながらボールペンを走らせたのでした。テッシーのギター、かなりかっこいいです。


5.キツネのRainbow (作詞:笹野みちる 作曲:手代木克仁)

 みちる庵2月の新曲です。みちる庵のリハはいつもテッシーの自宅スタジオでやっていて、2月頃にはずいぶん旧交もあたたまってきていました。そこで、前から出来ていた歌詞を久々にテッシーに預けてみることにしました。すると後日、なんと彼は驚いたことに、全く違ったメロディーを2パターン書いてきたのです!(超前向き(笑))、ひとつははっぴいえんど風なフォークロック、もうひとつがこれでした。私はあえて自分の中にあまりなじみのない、ソウルでR&Bな曲調の方を選びました。有無を言わさぬレベルで、すごくPOPだったのです。さすがはメロディーメーカー、テッシー!.....久々にうならされました。


6.西向き (作詞:笹野みちる 即興演奏:3億3千円)

 6月最終回みちる庵で初朗読の詞です。最終回の新曲は2曲(あと1曲はネコパンチ)で、そのときのライブ録音をそのまま使いました。実はこの詞はその少し前、何かのきっかけで無性に書きつけたくなって、書き終えて冷静になってから「これはちょっとヤバイな…」と思い、リハに持っていくのをずっとためらっていたものだったのです。しかし、パソコンのデスクトップには常に置いておき、気が向いたときに開いては少しずつ手直しをしたりして、いよいよやるかどうするか決めねばならぬというリミットが近づいたとき、突如、猛然と勇気が沸き「やろう!」と思えたのです。ライブでも全く躊躇せず、とても集中して朗読できました。即興演奏と朗読とのコラボ、相乗効果で高めあっていて、非常に素晴らしいテイクだと思います。


7.はじめてのうた (作詞作曲:有田さとこ)

 2年程前から、ベーシストとして俄然輝きを増してきた有田さとこが、最近曲作りもがんばるようになってきました。2003前半のみちる庵の半年も終了し、7月のKCBミーティングで有田は3曲も発表しました。ところがその後、「実はもう1曲あるんです。これどう思いますか?」とメールで私のところに送られてきた歌詞を見て稲妻に打たれ、すぐ返信メールを書きました。「これは私のソロ用に、是非戴きたい!」と。なぜならすでにそのとき、私の中ではソロアルバムのコンセプトは「ナカナオリ」だと決まっており、この「はじめてのうた」は、そこにあまりにもぴったりだったのです。「西向き」のあとにこの曲を聴くと、詞に内包されている深みがあぶり出されてくるようで、毎回涙ぐんでしまいます。アレンジは新進気鋭の音響系アーティスト、原田智弘さんがさらにイメージを広げる絶妙なサウンドで包んでくれました。


8.ペタっ (作詞:笹野みちる 作曲:ハラミドリ,中村コメタロー,笹野みちる)

 5月のみちる庵新曲です。歌詞を書き上げた瞬間、無性にこの曲はハラミドリちゃんに書いてもらいたい!と閃き、熱いメールを書いて詞を見せたところ、気に入ってもらえてあっという間に曲のアイディアを聞かせてくれました。このときミド姐曰く、「あるプライベートな出来事から、すごく詞とシンクロする気持ちになっていたのでびっくりした」、と言われました。ちなみにメールでは「ミド姐」「笹奴」と呼び合う仲で、きっと前世は不良芸者か不良花魁の先輩後輩という間柄では…などと、うっすら思ったりする不思議な仲です(笑)。そんなに語り合ったこともないのに、妙に生き方とか考え方とか、通じ合っているような気がいつもするのです…これからも、よろしゅおたのも〜しますぅ....ミド姐さぁん。(笑)


9.HAPPY HALLOWEEN (作詞作曲:笹野みちる)

 この曲は、4月のみちる庵での新曲ですが、詞を書いたのは前年の秋でした。ちょうどハロウィンの時期に京都のとある場所で…本当に歌詞さながらのシチュエーションで生まれました。あまりにもそのまんまなので語ることがありません。でも、本当に、切実な気持ちで一気に書きました。それは本当に、何てことないようなことばかりなのに、全てが大切で濃密な“気配”でした。Recでは、東京少年のファーストアルバムの時以来久々に再会した下山淳氏に、ここでこういう気持ちになれるようなギターを弾いてほしいんです、とじっくり伝えたところ、飲み過ぎ&寝不足ですごい形相の下山さんでしたが、とても真剣に話を聞いてくれて、驚くほどジェントリーなギターを弾いてくれたことに感動しました。演奏面では、朗読部の繊細で美しいインプロから、歓喜のRockエンディングへとなだれ込むダイナミズム…湊さんやっぱスゴイわ!…に、思わず身を乗り出し立ち上がり、歌い出さずにはいられません。


10.始まりの風景 (作詞作曲:笹野みちる)

 実は、この曲が今回の一連の流れで、もっとも最初に完成した曲です。2002年の秋、来年から“みちる庵”をやろうと決めた数日後、井の頭公園で歌詞が生まれ、部屋に戻って、なんとはなしにギターのコードを探すうちに自然に曲が出来ました。まさに、いろいろあったけど全てをゆだねきってみよう...と決心した心境で生まれた曲でした。この歌詞の出来方はとても不思議なのですが、それを語るのはやめておきます。私の胸に一生秘めておきます(笑)。個人的にすごく大事な曲です。1月のみちる庵で初披露した曲であり、ここから本当に全てが始まりました。年齢を経るにつれて、きっとどんどん深まっていく歌のような気がします。そして、この曲のホッピーさんのピアノ.....真にジェントリーです。大好きです。

 

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